”言葉にどんな命をこめるか” 執筆はその問いかけの連続です。

 ひとつひとつの言葉が持つ歴史と可能性を見つめ、​温度、湿度、テクスチャー、肌触り、舌触り、香りを確かめながらつなぎ、調和させ、整えていく仕事には終わりがありません。彫刻を彫る、音楽を奏でる、食事を作るという仕事に通じるところがあると感じています。文字数や納品日という制限内で素材の特長を生かし、無駄を省き、ひたすら磨き上げる地道な戦いです。

”言葉=私たちの意識・無意識の断片”

 一滴のしずくが静かな水面に落ちた時に広がる波紋。波紋どうしが干渉しあい、やがて大きな波やうねりが生まれます。言葉も伝播し、他者と共振し、それを繰り返します。

この世界は、厳しくも美しい。

 

 けれども私たちはそのことをつい忘れてしまいます。何かに追い立てられているかのように急ぎ、夢を見る暇さえないと言います。そんな世の中でも、美しさを発見することはいくらでもできます。車窓から見える空にも、目の前にいるそのひとの心の中にも。

 最も身近で、最も遠い宇宙。私たちの意識・無意識は、無限に広がる未知の場所です。そこから生まれる私たちの言葉の影響力や、美しい言葉を選ぶことの意味を追求するために、執筆という仕事に取り組んでいます。

​梓川葉  執筆家

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